\require{AMScd} 最近, Mathjaxで遊んでいるので, それを使って, 関手と自然変換について調べたことのメモ.
関手とHaskellのFunctor
関手
Fは圏
Xから
Yへ対応を表し, 圏
Xの各関数
f : A \rightarrow Bを
F(f) : F(A) \rightarrow F(B) として移すものです. 関手は元の圏の関数について合成則を保存し,
f : A \rightarrow B, g : B \rightarrow C,を関手
Fによって移すと,
F(f) \circ F(g) = F(f \circ g)という性質を持ちます. また, 元の圏の各対象Xについて, 移した先の関手
F(id_X)の射もその先の対象の
id射となります.
Haskellにおける関手
Fは, 名前も性質もmap関数に似ています.
class Functor a where
mapf : (a -> b) -> f a -> f b
mapfの実装として, リスト上のmap関数を考えると, 関手の合成則の保存が成立し, (map f) . (map g) = map (f . g)という規則が成立するはずですが, これは, プログラムの融合変換では一般にmap分配則と呼ばれるもので, 一般に成立します.
つまり, ある型からなる圏〜リストへの関手とは, ただのリストのmap関数だということになります. 上記の定義では, 対象についての対応関係を考えていないように見えますが, 射
F(f)が定義されれば, 自動的に対象同士の対応関係も定義されるということでしょう. というわけで,
任意の型Aのリスト/Map関数は, AからAのリストへの関手だということになります(太字部分, 2016/05/02追記修正).
一般にmap関数は, リストだけのものでなく, 木構造へ応用できます. 例えば, 2分木について, 木構造の各要素に関数fを適用するmap関数は容易に想像できます.
data BTree a = Leaf a | Fork (BTree a) (BTree a) deriving Show
を考えることにして,
instance Functor BTree where
fmap f (Leaf a) = Leaf (f a)
fmap f (Fork a b) = Fork (fmap f a) (fmap f b)
タプルのリストで, 二番目の要素のみへの関数適用を考えるなら,
data TList a b = Nil | Cons a b (TList a b)
instance Functor (TList a) where
fmap f Nil = Nil
fmap f (Cons a b rest) = Cons a (f b) (fmap f rest)
とすれば, Functorのインスタンスとして具体的な関数が実装でき, 関手が定義できる流れになります. 代数的データ型なら, (fmap f)
= F(f)の対応について, 自由に考えることが可能です. 関手というと身構えてしまいますが, 関数型言語上では, 単なる高階関数として表されることがわかります.
自然変換とHaskell上の関数
関手
F, Gにおける自然変換
\muは, 関手
F, G : X \rightarrow Yについて,
\mu \circ F(f) = G(f) \circ \muを成り立たせるもの. というわけで, 可換図式を考えると,
\begin{CD}
F(A) @>{F(f)}>> F(B)\\
@V{\mu_A}VV @V{\mu_B}VV \\
G(A) @>{G(f)}>> G(B) \end{CD}
となります(上図 : 2016/05/18修正). 前述の条件を満たしていることがわかります. 自然変換の概念は, 2つの関手
F, G : X \rightarrow Yの移した先の対応
\mu : F \dot{\rightarrow} Gを定義するものですが,
\mu \circ F(f)のルートと,
G(f) \circ \muのルートの結果(計算)を同一にするものと考えると, わかりやすいですね. ちなみに, 上記の可換図式の個々の
\mu_A , \mu_Bは, 別の射(関数)である場合もあり, 個々の射は, 自然変換のコンポーネントと呼ばれるそうです.
問題は, この自然変換を表すプログラム上の関数とは何かということです. 調べたら, 以下に例がありました.
Category theory/Natural transformation - Haskell Wiki
前述のデータ型BTreeとリスト([])で書くとすれば, 自然変換
\mu : (BTree a)
\rightarrow [a]の自然変換とは, 例えば,
flatten2List :: (BTree a) -> [a]
flatten2List (Leaf a) = [a]
flatten2List (Fork a b) = (flatten2List a) ++ (flatten2List b)
になりそうです.
可換図式の主張する合成規則
\mu \circ F(f) = G(f) \circ \muは,
((flatten2List . fmap f) = (map f . flatten2List)
が成立するはず. あまりにシンプルですね. ただのキャストに相当する(?)何かになりました.
さらに自然変換
\muには, 別の自然変換
\etaとの垂直合成
\eta \circ \muを考えることも可能です. 前述の可換図式に下にもうひとつ自然変換をくっつけた形で, 以下のようになります.
\begin{CD} F(A) @>{F(f)}>> F(B)\\ @V{\mu_A}VV @V{\mu_B}VV \\ G(A) @>{G(f)}>> G(B) \\ @V{\eta_A}VV @V{\eta_B}VV \\ H(A) @>{H(f)}>> H(B) \end{CD}
関手fmapの実装として, Maybeについて考えると,
data Maybe x = Nothing | Just x deriving Show
instance Functor Maybe where
fmap f Nothing = Nothing
fmap f (Just x) = Just (f x)
と定義することができて, この時の自然変換
\eta : [a]
\rightarrow (Maybe a)を考えれば,
list2Maybe :: [a] -> (Maybe a)
list2Maybe [] = Nothing
list2Maybe (x:xs) = (Just x)
となると思います. この時の,
\eta \circ \muによる自然変換の垂直合成は,
(list2Maybe . flatten2List)
となり, 可換図式を満たすなら,
((list2Maybe . flatten2List . fmap f)
= (list2Maybe . map f . flatten2List)
= (fmap f . list2Maybe . flatten2List)
となるはずです.
参考文献